細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

「慰安婦」問題とは何だったのか

大沼保昭国際法学者ですが、基金にこんなに関わっておられるとは知らなかった。
アジア女性基金が、どのような認識の下に何をしたかを丁寧に解説している本です。新しい本ではないことを確認しての購入。
知らない事実(戦時中のことではなく、基金が何をどのようにしたかということで)が盛りだくさんでとても勉強になりました。行政のみならず、マスメディアのあり方について、市民のあり方について考える著作ですが、何より大切なのはイメージではなく事実に基づいて考え、そして話すこと。

(この本にそういうことが書かれているわけじゃありませんが、)河野談話基金の設立は、何も朝日新聞の記事を根拠にしているわけじゃないのに。「総じて本人の意思に反して行われた」という表現は、軍(という組織)が人攫いをしたわけじゃないことを前提に、業者の募集のあり方、軍の慰安所の管理のあり方などを踏まえて選ばれた表現であるはずなのに。「慰安婦に関する政府の関与」の調査をしたのは内閣官房外政審議室であって朝日新聞ではないのに。
吉田証言が虚偽であっても、慰安婦の存在は否定できないし軍の関与も否定できない。そしてその上で、日本政府は被害者に内閣総理大臣の手紙を渡すという世界的にも稀なお詫びの気持ちの表明をしているのだ。
あるものを否定するかのように見えるバッシングは、国益を損なうものでしかない。
明らかな事実はここまでだ、不確かな証言の存在はここまでだ、この言説は事実に反し否定すべきだ、そして私たちの国はできるだけのこと(賛否両論あるのはわかるが)をしたのだ。
ネットの片隅でそれを訴えることが、この本を読んだ、自分の国を愛するひとりのささやかな「私」の自己表現。そして史料を多々引用し、分かりやすくまとめているこの基金の資料室を、一人でも多くの方が見てくださることを。
http://www.awf.or.jp/1/index.html