細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

ぼくは毒ガスの村で生まれた。

化学兵器CAREみらい基金編著。中国大陸に残された日本軍の毒ガスのはなし。それから日本での毒ガス製造工場とか。扇情的な文章はまったくなかったですけれど(かなり読みやすいと思います)、怖いですよ。だってどんなに防護しようとしてたって製造・使用工場で有害物への曝露はなかなかゼロにはならないっていうのに素手で触っちゃったりするわけですよ!、分からないから。建設現場で鉄の塊と何かの液体が出てきたからって、それが何か分かる人なんていないもの。たったの数時間の接触で一生の影響を受け、治らない。いま使うものなら害のないものをできるだけにせよ選ぶのに、そもそも人に害を与えるのが目的なモノたち。
個人的には何よりも、「会社に責任はないという理由で労働災害とは認められませんでした」という一文が残るのです。それはそれでよくわかる、すごく良く分かる。そりゃそうだ、中国の会社に責任があるわけがなくて、日本国の責任で、それを求める訴訟があって。すごく良く分かるけれども引っ掛かりをもって残る。それは私の労働災害補償制度に対する過大でかつ誤った※期待で(だって会社のせいじゃない!)、でもそこから考え始めてようやく私は訴訟のやむなきを思うのでした。
※大きな期待ではあるけれど誤った期待というには忸怩たる思いもあるけど、もともとの考え方からいえばどうしても。でも日本国内の、例えば寒川町の事案では、労災認定されているのです。
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