細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

レインツリーの国

有川浩。図書館内乱の、作中作。いいえもちろん完全独立の恋愛小説。隣街の図書館で見かけてそのまま読了。
図書館シリーズほど、べた甘じゃありませんでした。ほかのシリーズもかなり甘いと聞いていたからちょっと意外。聴覚障害があろうがなかろうが、女の子のひとりよがりぶりが身につまされつつ、身につまされるというのは共感できるということで。好きになってもらおうとする、ことのハードルは高い。
そして男の子のストレートぶりがすごいです。ざっくりと切り込む切り込む。あんなふうになれたら・・・なれたら・・・なれないよ!はっきりと、彼女を責める。責めることが誠実さで、そしてなにより恋愛を成就させたいからで。それほどまでに、彼女は魅力的だったんだなぁ。言葉の力と彼女の感性を信じてなきゃこうはしないだろう。そこに見られる「会えばいろいろ」と「ネット上の活字で表現される魅力」の重なりと違いもいい。
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一行だけネタばれ?だとしても言いたい。 帰りの電車、恋愛でなくて髪を切ったことを中心に据える彼女の独白が、とても格好いい。素敵です。

・・・・・一日おいてつくづく思ってさらに次の日に追記。
私は図書館内乱先読み組みで、そしてそれは外れでないと思っておりますが、しみじみつくづく正論さんはほんとに確かに正論さんだと思わされます。この女の子、身につまされる、つまりは多少痛いのです。それだからこそ恋愛という道を辿ってそこから先へ進むこの小説は素敵なお話なのですが、毬江ちゃんにこれを勧める、あの子が確かにこれを楽しむと確信する、それは先へ進むこと、現に彼女が進んでいること、進むことを素敵だと思うこと、どれもを(どれかを?)強く肯定し、そしてその感情を彼女と共有できると思っているということ。ひどく正しくて、そして現に毬江ちゃんとそれを共有できているところがすごくて。クラスメイトの失言はわかる、それは確かに間違ってるけど。
ひどく正しくて、それがまさに正論さんの魅力で、この小説の魅力で、毬江ちゃんと小牧さんの揺らぎなさで。成就しなけりゃ嘘だ。