細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

ブレイブ・ストーリー 上・下

宮部みゆき。児童文学でも良いかもと一瞬気の迷いが生じたけれど、でも中盤のあの憎しみの取り扱い方はやはり基本大人向けかと。GWにテレビで映画を見たので、図書館で借りてきた。分厚いけれど紙が軽いので読みやすい。いま見てみたら初版本だよ、びっくり。2003年。
映画は大人にも子供にも、アニメやファンタジーというものが嫌いでなければ大丈夫でしょう。先に見たものの印象が肯定されるのはどうしようもないことで、そういう偏りの上での映画先見者の感想ですが、映画はなかなか良かったです。時間的な制約からして原作よりも薄いのですが、特にこの世界から旅のはじめ、ビジョン(幻界)に来たときの展開のテンポのよさは原作の上を行くかと。
原作が映画と同じであってほしいわけではないのですが、おためしのどうくつの「途中」でラウ導師さまが出てくるのは、ちょっと。このあたり・・もう少し先まで、まさにRPGゲームの軽みが文章の魅力に思われたので、残念でした。
進むとそのうちに、軽みが気にならなく・・軽くなくなってきます。ゲームを眺めているよりは、本を読んでいるという感覚(ゲームが一般に「軽い」というつもりではないのですが、軽さが楽しいのもゲームです:私にとってはそれは初期のドラクエの魅力)。憎しみの取り扱い、法と正義(実利?)、そしてそれらより。
「だから、今あなたが下す決断は全て、未来のあなたを裏切る」将来の不運を、過去の決断に帰したくなる。それは酷く良く分かる、身近な感情。決断にいたる正しい道、決断の内容が同じでも、辿る道が違えば怖いほどに決断の意味が違う。映画がすっ飛ばしたこの課程(確かに映画向きの検討内容じゃないと思う)、どうしても飛ばせない旅に必須の導きで。
それにミツルとの対比、映画はばっさりと上手く纏めていた(映画はこのふたりの関係に原作よりもより重きを置いたみたいだ)、その最後のミツルのワタルへの呼びかけもよかったけれど。原作の贖罪の祈りの痛ましさ愛おしさは本で読んでよかったです。
映画にしても原作にしても終章はなぜそうなる?って思ったのだけど。でもいいや、映画も原作も引き込んで楽しませてくださいました。
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