細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

アイヌ神謡集

知里幸惠編訳。職場帰りに時々立ち寄る地元の小さな本屋さんは、地元の小さな本屋さんだけあってコミックの新刊を入手するのは困難ですが(ほんとはハガレン14巻があると思って出かけたのです、発売日5日後。入ってないのか売り切れたのか・・・)、不思議に岩波文庫が充実していてたいしたものです。
それで、アイヌ神謡集
Shirokanipe ranran pishkan 銀の滴降る降るまわりに
音で聞いたらぜんぜん分からないんでしょうが、声で聞いてみたい。声に出して読み上げてみたのですけれど、1篇めの半分くらいで落伍しました。折々に繰り返しがあって、読むのは楽しいのですけれど、違う言葉だということも思い知らされます。かたや私の使える言語であるほうの日本語は、大正11年のものですが今でもすうっときれいに染みとおります、注までも。
神さまのお話、人の話。思った以上にさまざまあって、13篇・・・たった13篇。いまはほかにも色々と資料があることには感謝しつつ、それでもどうしても切なくもあり。哀切な序文に民族と夭逝した筆者が二重写しになりますが、そこには「やがては」の希望も含まれている。それから80年以上が経ったいま、そのいまをどう見ればよいのだろう。・・・・・・それはまさにこの本みたいで。文字という手段で残りつつ、たぶん音はもっとぜんぜん違うのだ。でも、私はやっぱり文字に感謝するのだ。読めてよかった。
→ Amazon.co.jp 上で日本語、と書いたとき、どう考えてもその中にアイヌ語という言語体系は入らない、とそう感じる。日本人、と書いたときにはそうでもないのに。「日本」はこの「国」をだけ表しているのではないのだなぁ。
ところで、これを読んではじめて月神シリーズの「削り花」を「イナウ」で検索すればよいのだと気がついて。知里さんの訳は「御幣」ですが写真を見ればこれもまたひどくごもっとも。東北地方のバリエーションも色々あるようです。東北のは色も色々(^_^)。