細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

ラインの虜囚

田中芳樹。え、田中芳樹?奥付を見ると2005年。え、知らない、知らない、いつの間に。大きな活字、少なめの行数、行き届きすぎくらいの振り仮名、立派で少々不思議な装丁(布張りの部分と紙張りの部分が。図書館がしたことのようにも見えないし、けれど(これは図書館がしたはずの)ビニールカバーがなければ剥れてきたりしないんだろうか)。そのあたりは出版社の方針かな?ああ、これ「くらのかみ」を出してるシリーズなんだ。いつか絶対読むぞ〜。とと。
かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド。シリーズ自体のかなり明確なコンセプトのうえに、後書きで田中芳樹はここで書きたい物語の条件を明示している(この後書きは、先に読んでも差し支えない類のものですよ)。舞台が外国で、時代が現代でなく、子どもが登場しない。でも田中先生、話のつごう上少女をひとりとおっしゃっておいでですが、「少女がひとり」と「子どもがいない」はかなり本質的な違いじゃないかしら。海底二万里不思議の海のナディアくらいに(笑)。どちらも好きなので、私としては全く問題はございませんが。(田中芳樹の本でここでの条件を満たすもの、もともといくつかあるしね。)
シリーズの条件をさっくり満たした、少年少女が楽しめる(私も楽しめる)すっきり筋の通った冒険譚。ミステリー(?)の謎解きのあとにも素敵な種明かしが待っている。ドイルの勇将ジェラールの回想、探してみることにします。
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