細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

きみのためのバラ

池澤夏樹。(ほぼ)男と女の邂逅と離別の短編集。どこかの都会やヘルシンキ、沖縄メキシコなどなど舞台も様々、空気の温度と湿度が語りを読み手の皮膚のすぐ外にまとわりつかせます。邂逅から離別までの間、現実から少しだけずれた世界にいるような奇妙な感覚にすっぽりと取り込まれ、それが「心地よい」ほど単純ではないのだけれど、だからこそ惹きつけられる。青い薔薇のどちらかといえばシャープな表紙ですが亜熱帯の本です(そのどちらの感覚もがそしてそのギャップがまた魅力です。)。