細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

獣の奏者 I 闘蛇編 II 王獣編

途中まで読んで引き離されてしまったら、続きが読みたくて仕方がなかった上橋菜穂子のうん、名作。情と思考、探求心と意味ある掟、一歩一歩進みつつ、何かに翻弄されているのでもある。緊迫した場面はしんと張り詰めて、ふわりと穏やかなたくさんの場面にも、裏にぴいんと張った甘い苦い情、おかあさん。
これは少女が大人になるまでを描いているけど成長譚ではなくて、一人のひとが直面しその度に知っても知らずも決断する選択の葛藤。主人公エリンは迷いつつ考えつつも明るく温かい方からぶれないので、読み手としても悩ましいけれどもうれしい。イアルの側のお話の挿入バランスも緊張感の維持に絶妙。
おそろしい闘蛇までも魅力的な物語、気が休まることなく惹かれます。