細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

おんなのことば

茨木のり子。6編の詩集から、童話屋さんが編んだアンソロジー。わたしが一番きれいだったとき、とか、自分の感受性くらい、とか、有名どころはもちろん漏れることがなく。私が一番きれいだったとき、の空が見える突き抜けた明るさは以前より大好きなのですが、このたび初読みのベストはこちら、『みずうみ』。
だいたいお母さんてものはさ/しいん/としたとこがなくちゃいけないんだ
ひと、ではなく、おんな、でもなく、お母さん。忙しく立ち働く、娘たちを躾ける、おかあさん。いえ、お母さん。(ひらがなで書いてみて、やはりそぐわないことを悟って呆然とした・・・。)現実の動くイメージがあるゆえに、しいんと静かな湖の深さ冷たさ美しさが際立ちます。緑濃き鏡面。立ち返ってお母さんでない私にも、湖を。感想を書いてみて初めて抽象と具体の説得力あるバランスに気づきつつ、しいん、としたとこを持つひとの、強い強い美しいイメージ。
『汲む』のおとなのやわらかい凛々しさも好き。「娘は誘惑されなくちゃいけないの」(『あほらしい唄』)なんて、私の中にこれまであった茨木さんの枠から外れてて、でもとてもらしくて好き。本年2月にご逝去されました。合掌。
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