細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

サンタクロースの部屋 子どもと本をめぐって

松岡 享子。翻訳者でいらっしゃると承知していましたが(それは確かにそうですが)、ここではむしろ、図書館司書。読み聞かせをされる方には(財)東京子ども図書館の理事長、と申し上げたほうが通りがいいかしら。これまたもうすぐクリスマス・・・ではなくて、サンタクロースを信じたその心の空間の賛美がこの本のタイトルとなっています。サンタクロースが仮にそこを出て行っても、その空間は確かにある。確かに私も、その空間で本を読んでいるのです。
図書館にあったのは2003年のきれいな版ですが、1978年初版の古い本。後半「近ごろの子は」となるのは(子どもを責めているのでは決してありませんが)この年でさえその近ごろの子よりもさらに近ごろの子どもである私にとっていただけないところではありますが(苦笑)、書かれていることはどれもいまでもよく分かります。いまどき「もう少し字の多い本借りなさい」なんておっしゃるお母さんはいらっしゃらないと思いたいところではありますが、・・・どうでしょう?。本は楽しみで、具体的な問題の特効薬ではなく、本を読むことと字を読むことは別物で、読めても読んでもらいたいのはごくごく自然。
公共の場での(家で子どもにするのではない)読み聞かせや覚え語り、実はあまり好きではなかったのですが(易々と読めるレベルになっていれば、「他人の声」という媒体は結構邪魔だから)、耳で聞くからこそ易々と読み飛ばしてしまうことがないはずなのももっともで。耳で聞くことばには目で見る言葉と違う力がある。それは何で言われるまで忘れていたかなと思うくらいに確かなことなので。
声が邪魔かどうかは結局コミュニケーションがうまくいっているかどうか、なんですよね。それは話し手だけのせいでも聞き手だけのせいでもない。独りよがりに話してもいけないし、聞く耳を塞いでいてもいけない。そう思うとなおさら一対多数の読み聞かせって大変だなあと思うけど、聞く耳を開いて、こんど図書館で時間が合ったら聞いてみようかな。(こんな大人が急に聞いたら話し手さんは無用に緊張して迷惑か・・・(^^ゞ)
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