細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

オリーブの森で語りあう ファンタジー・文化・政治

鼎談。ミヒャエル・エンデと、政治家エアハルト・エプラー、演劇家ハンネ・テヒル。ときどきインゲボルク・ホフマン、エンデの妻にして俳優。場所はローマの郊外、オリーブの木が精霊の助けを受けて育つエンデの自宅(このとき、ドイツじゃなかったんだ!)。
語られようとしているのは、ポジティブな、現実的なユートピア。例えば経営者が将来の経営を語るとき、それはもちろんいろんなものに縛られている。いわく、景気が悪い、競争が激しい、経済成長の限界少子高齢化、資源の枯渇、などなど。そういうものに縛られなかったら、では、何を言う?何が理想?
健康とか喜びをもたらすものを生産するとか、働く人がちょうどいい負担で働けることとか、あと何かあるかな。そういう何かを考えて見る。その試みは決して成功してはいないのだけど、そういうものを考えてみようとして、そしてその問題設定が共有されてるだけで読んで後悔しない。
さて試みは必ずしも成功しなくてでは実際に話はどの辺に転がっていくのかというと、教育への出資主体とか、演劇とか、環境(=因果律)とただそれだけにはよらない人間というものとか(いやもちろんこれらはまさに試みに含まれるのだけれど、でもやっぱり違う)。印象に残るのは意見が合わないところで、実はこの鼎談では全然意見は合ってなくて(そしてそれぞれ・・・とくにエンデは頑固だ(^_^;))、それぞれわかるのが魅力だ。
→ Amazon.co.jp