細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

変身/掟の前で

いままで読んだことのなかったフランツ・カフカ。あまりにも有名な「変身」。こんな話だったのか、という驚きにひたっています。
高校の国語の先生に安部公房について熱く語られた記憶が私の読書の半分のバックボーンになっていて(自分がわからない、心地よくない、という物語への価値の見出し方があるという視点を知った)この本は読みながらそっち側の半分の私が読んでいたのだけれど。いやこれは、違うのかも。
判決/変身/アカデミーで報告する/掟の前で、他の3作はともかくも「変身」は。異化とかそんなことじゃなくて、残りの半分の私、物語をそのまま受け取る私の切なさに響く話だったと読了して感じが変わったのでした。もちろん落ち着かないけれど、虫も家族もひたすらひと。突き抜けた朝の空気がからりと凄いです。