細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

犬養道子自選集2 ある歴史の娘

犬養道子自選集の2つめ。こちらは戦前の、つまりは「犬養毅首相の孫」による様々な事象への感性が記された文章。微笑ましいたくさんの風景に、でも読みながら不安が募るのは、もちろん読者がその後を知っているからで。でももちろん、微笑ましいところがある風景も事実で。歴史は人が織りなすという当然のことが、豊かで穏やかな(狂信的なところのない)感性とともに描かれる。学習院の学友の人間関係にif の望ましい解決を委ねるわけにはいかないとしても、そういう関係があっただろうこともまたそのときその世界の事実で。世界はそれに止まらないから歴史はそうなった、というのも事実だけれど。
垣間見を楽しむところは確かにある、そしてひととは歴史とはを思う、もっとちゃんと考えることが必要なのかもしれないのだけれど、読むことが切なくも嬉しいものではありました。