細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

君の働き方に未来はあるかー労働法の限界とこれからの雇用社会

大内伸哉先生の光文社新書。奴隷と根源的には同じ雇用の(雇傭の)従属性に重点を置き、というか労働法をそれなりに学んでいれば既知だけど、あまりみんな声高には言わないそれを注意喚起する新書。だから、正社員を目指す人生の戦略は正しいのか?という問いかけ。
大内先生自ら曰く、労働法研究者で公式にこういうことを言う人はあまりいない、確かにそれはそうであって、そしてやっぱりそれには理由があって。奴隷という言葉は複数の要素を当然持っていて、雇用の従属性と結びつくのは労働力の使い方の無自由さだろう。だけどこの言葉は強くって、多くの人に想起させるのは労働力の処分そのものの無自由さ、自己の意思によらずに(その内容は意に沿うものでも)売買されて使用されることじゃないかと。
そのあたりの言葉に注意した上で、もちろん話の中身はごもっともなことは大変ごもっともで。正社員ばかりが仕事じゃない。・・・でも、起業ってそんなにいいもの?片側に寄った振り子を揺すぶってみるのはわかるのですが、さて、もう片側にあるものは実のところ何なのか。まあ、自分で考えろって話ですね(笑)。
なんというか、当たり前の話ですが、本は読み方に気を付けないといけないよね、と、それは多分いい本だということなのですが、改めて思った次第でありました。