細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

紅梅白梅

曽野綾子塩狩峠から逃げている私は、長編を読むのははじめてかも。ある少尉の数か月。慕う女。女のねっとりした低く濃い慕情と作中現われる書き手と語り手の客観が戦場の背景で作品を支えている。感情移入や共感とは違う形で、しかしこの少々とりつきにくい少尉の話を読ませるのだ。
作者とともに確かに思う。我々には欠点がいくらもある。限界状況にいないから、我々はそれを突き付けられずに済んでいるのだ。