細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

なぜ人を殺してはいけないのか

永井均×小泉義之。対談とそれぞれの論。1998年初版、哲学はさすがに1998年版はまだぜんぜん賞味期限切れではないんだなあ。永井さんが好きで手に取ったところ、小泉さんのも機会があれば読みたいと思わされつつ。
率直な感想は、「もったいない!」。議論は、かなり噛み合ってません。で、各々の論で、噛み合ってないことを永井さんは突き放し、小泉さんは黙殺する。でも、対談より各論の方が魅力なんだな、どちらも。哲学ってのはやっぱり一人で考えるのが基本なのかな。正しく突き詰められるから。対談で正確に突き詰めていたら、絶対実際の対談ほどまで進まない。けれど、もしそうだったらどんなにか。だって各論はどちらも分かるんだもん、噛み合ったらどんなに刺激的か。
「きみは人を殺してもよい、だから私はきみを殺してはいけない」(ちなみにまだ先があります)。これは<子ども>のための哲学の「なぜ悪いことをしてはいけないか」よりずっと読みやすく美しかった。「殺さなくてもいけているのに」問うことは傲慢で残酷だ、というのもわかる、殺してこなかったのは死刑があるからだって理由付けは、問いを肯定したい私も小泉さんと同様に「このくそガキ」って思うだろう。だって、絶対そうじゃないもの。
もすこし噛み合ったらいいのに、と思いつつでも噛みあってないからって対談がない方がよかったかっていうとそうじゃありえない。こういう対談もたぶんありなのだ。
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