細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

図書館戦争

有川浩。いやはや、評判どおりに面白かった!正義の味方に確かな憧れ、悔しくって越えたい背中、その底流にしっかり恋愛。そしてもちろん類を見ない魅力的なモチーフ、図書館の自由に関する宣言。図書館好きとしてはこの非常に楽しいこの本で、この宣言が知られることがかなりに嬉しい。この第1作は各章の章題がこの宣言そのままになっていて、しかもそれにぴったりはまった内容です。すごいv「図書館は資料収集の自由を有する」なんてのをかくも娯楽性高いドラマに出来るなんて。
武力で検閲を行う組織に武力で立ち向かう図書館隊の物語。もちろん図書館の通常業務のお話もありますよ、ご心配なく。荒唐無稽で軽くって、しかもそれを褒め言葉にしたい勢いのある物語。正義の味方を持ち上げているわけじゃない、上官はこの上なく尊敬できてでもしっかりきっぱり不公正さも指摘されてて、そして図書館の自由。軽くて、そしてぎっしりです。ライトノベルに抵抗のない方にはとてもお勧め、抵抗のある方もちょっと読んでみてくださいな、そう時間はかからないから。
→ Amazon.co.jp カテゴリどこにしようか、体裁はハードカバー、軽みに敬意を表してライトノベル、アマゾンではヤングアダルト――確かにこの前向きな成長加減が。いずれも悩んだのですが、とりあえず判断を排すべく形態によって分類しました。
堅苦しいことなんて全然考えなくて楽しめる本ですが、せっかくですので図書館の自由について。図書館は利用者の秘密を守る、読書は思想そのものだから。「耳をすませば」が映画化されたとき、「わが図書館もついにバーコード化するんだよ」の一言が映画に入ったのは日本図書館協会の陳情の成果だと聞きました。これは図書館にとって切実な問題で、ブックカードに貸出者の名前を書く方法、そこにある名前にこの人どんなひとだろうと憧れるのはよくわかる、そして素敵なロマンスですが、利用者の秘密は全然守られていませんからね。耳をすませばは純愛だからいいようなものの(?いやよくないんですけど)ストーカーさんだったら大変です。刑事さんかもしれません。刑事さんが被疑者の貸出履歴を問い合わせに来たとしても、令状がなければ普通図書館は回答しませんし、・・・令状があろうがなかろうが、返却された本の履歴はそもそも図書館は持っていないのが大勢のはず。もっとも、作中で出てくるとおり回答した過去の例もあるのですが。
これ、結構めんどくさい話ではあるんです。「図書館を利用している」のも守られるべき秘密の中に入るから、館内呼び出しなんかもやってくれないところが多いらしい。学校図書館で生徒(図書委員とか)に貸し出し手続きをさせるのも、微妙な話になるらしい。返却図書の督促をするときも、留守番電話だったら書名は言わない・・・・書名忘れてる可能性も、高かったりするんですけど。
不便ではあるんですけど、どこまでが守るべき秘密だろうとも思うんですけど、でもどこまでもだっていう信念もわかるので。貸出履歴・・書名が流れるのは私も嫌だし。この固い、少なくとも固く運用している図書館たちがそれなりにある宣言、私は好きです。お近くの図書館に掲示されているかどうか見てみませんか。