細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

タマリンドの木

池澤夏樹。標題は、タイの難民キャンプに生えている木の名前。調べてみると熱帯に広く分布する高さ20〜25mになる常緑の木で、葉が茂る、だから熱帯アジアでは広場や公園、街路によく植えられるとのこと。実も生って、酸味料として使われるそうな。
キャンプは重要な道具立てですが、とにかく恋愛小説。中盤までの緊張感、駆け引きというには消極的な、でも葛藤含みの危ういバランスの上にようやく成り立っていく関係は息を潜めて見守りました。成り立ちと、距離の意識、このふたつに読んだ価値があります。とても好き。男性視点なのも私にとって新鮮ですね。・・・エンディングの展開はあっさりしすぎではないかと疑問を感じておりますが、前3分の2でお釣りが来ます。たまには恋愛ものも読みたいけれど、例えばハーレクインなんて論外、という方、お勧めします。
→ Amazon.co.jp