細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

花を運ぶ妹

池澤夏樹。ずいぶん抱え込んでいたけれど、時間が取れればあっという間。カヲルに導入部で、兄にはじわじわと終盤付近で惹かれていきました。
全編とてもみずみずしい。水が不可欠でときにとても残酷で。救いで、惑わしだったりもする。パリの川、バリの海。ベトナムの靄がかった空気。タイの雨、そして川。祈りとは何だろう。何かを叶えるためではない、それだけは確か。でも何かを祈るのだ。
麻薬も、死刑も、それが話を上滑りさせないのがすごい。それは主題でない(と思う)、けれど不可欠の道具。そして読んでいる最中も、ぎりぎりどん底までは突き落とさないように書かれている。予定調和的ともいえるけど、その書き方が祈れることへの印象を強めた。とにもかくにもやっぱり好きだ!
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