細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

働く女子の運命

※ このレビューはだらだらと長いです。すみません!

hamachanの新書ももう5冊目。分野別が中高年・若者ときて今度は女性。ちなみにどーでもいいことですが、岩波、日経、ちくま、中公、文春とラインナップがバラバラなのはなぜだろう。ぶれずに同じ話なのですが、書名には出版社カラーが出る気がします(笑)。さらについでにAmazon濱口桂一郎で検索したらば労働法政策が引っかからないのはなぜだろう・・・ってデータが「浜口」になってるからか。Amazonさーん、頼みますよ。
さて、今回はなかなか書店で入手できず、約1月後にネットでぽちり。そしてそれまでに拝見していたのが濱口‐金子論争(?)であって、しかもさっぱり意味わからん(その理由は未読だからというだけではありませんな)。読んだらちゃんとわかるのか?わかるのか?と思いながらの読了でした。読み終えてもまだわからず、再度両ブログを読み直してちょっとだけわかったかなぁ、です。

ジョブとメンバーシップの話は当然ほかの本と同じでありますが、5冊目ということもあり?さらっとしている気がします。この本の主たる魅力は、戦前から女性監督官がいたなんて知らなかったよ~!!とか、そういうエピソードの数々が第一かなと。若年定年制や、その当時の会社側主張などは(私には)なじみのある話だったので「ふんふん」くらいの感じですが、こういうことを「大学で労働法や労働経済の講義で学ぶ(しかもそれなりに突っ込んで学ぶ)」以外の機会に知ってもらうことができるのは、ものすごく貴重なことだと思います。長期勤続のメンバーシップ(という言い方ではないにせよ)に(多くの場合自発的に≒社会システム的に)入らないことが女性の低賃金(のみならずそれと表裏一体/ニワトリタマゴの別コースなど)の原因であるということが、ずいぶん昔からその時々の女性の(別に男性でもよかったんでしょうが)官僚や研究者の言葉で指摘されてきていたということとか。・・・そう、「文献の引用」がなんだかすごくじわじわエピソード的なんですよね。それはhamachan先生の意図なのか、読む私が女子だからなのか、原資料を書かれた方の切なる思いなのか。均等法をつくる、そのうち大河でやりませんかねぇ。

ということで、男女平等政策がやはりメインストリームになるのは(私が「労働政策分野」に染められているせいか)もっともと思うわけでありまして、いかに現時点の男女平等政策が男を巻き込むべき局面にあるからといっても、こう(まずは女性政策という観点から)男女平等政策を書くことになるのはやっぱり本筋かと(そして私のような読者の感情移入をしやすくするものであると)。
で、一方で、知的熟練論に加えて宇野理論(←大学でちょっと聞いただけ)のロジックについて私は「ふんふん」と読んだのではあるものの、それらは「皮肉にも女性差別を正当化したロジック」ではあるのだろうけれど、「女性差別をもたらした当初の原因」ではないわけですよね。知的熟練論は(中高年のときにまさにhamachan先生の指摘で気づいた話であるように)年功的賃金という実態をみてその理由を説明づけたものであるのであって、知的熟練論があったから年功的賃金が生まれたわけではない。知的熟練論があったから女性が男性と異なる低賃金であったわけではなく、宇野理論があったから低賃金であったわけではない。だから「その辺いらないから家族システム論書くのが先なんじゃないですか?」と金子先生はおっしゃっているのだろう、と一応勝手に理解。んでまたさらに、hamachan先生に「男女平等政策の欧米と異なる展開」が主眼だと言われれば、は〜、なるほど、と。「現に(70年代以前から)女性が低賃金である(あった)こと」は、日本でも欧米と同じだからこの本におけるhamachan先生にとって所与の事実で論点ではないわけですね。ってこの理解も金子先生が「転換点は70年代」って書いてくださっているからで、・・・「分かりにくいわ!」って思わず叫ばれるのもわかる・・・。だったら70年代以前いらないじゃん、っていうのは思わずのそのノリですよね。ここまで詰めたらそうなっちゃうよねこの将棋、みたいな・・・。
いやもちろん、私が何より惹かれたエピソードは上記のとおり戦前の話ですので、70年代以前要るんですが。ってかこの↑理解が合ってるかどうかもあれですが、普通に一人でhamachan先生の本を読んだときに「何が足りないか」に気づくことなんて私自身ではほとんどできないので、金子先生のガイドは大変ありがたいものでした。じゃあこの分厚いわけではない新書が実際どうであったらよりよかったか、に代案があるわけではもちろんありませんが。タイトルなのか、序や結びでのフォローなのか。内容はhamachan先生が書かれる以上はあのままがやっぱり「らしい」のだと思いますが。(マル経だって素材だという意気のあたりも(すみません)。むしろ金子先生(というか世間一般?)の方が、それを絶対視してるわけじゃなくって別にマル経が社会を動かしたわけじゃないよねって冷淡な気が(重ねてすみません)。)

ところで統計的差別ですけど、人種なら「ひどいよね」で、性別なら「・・・わかるよね」になるんですかね?!なんでだー!こここそ私が読み足りない?能力なら「ひどいよね」で、勤続なら「・・・わかるよね」ってわけでもないですよね?。こちらはもう少し考えてみたいと思います。
育休世代のジレンマは若い勝ち組の話でしたが、私はあれがまぶしいキャリア先行組(そんな大したキャリアじゃないけど)。これ以上不妊に悩む女性を増やさないで!ってのは切なる願いなので、海老原先生案は断然なし!です。が、読まずにhamachan先生情報だけでとやかく言ってもいけませんよね(でも言いたくなるので書いてしまう(^^ゞ)。さてはて読むべき本はどんどん増えていくわけですが、それ以前にさて自分がこれからどうやって働いていくのか、職場と家庭に流されつつも自分でも考えないとなぁなのでした。この本は答えをくれませんが、だけど自分が働くことも、歴史に規定されつつ未来を規定していく流れの意味のある一滴だとは思わせてくれるのでした。(そういう読者の共感という意味で、非正規が落ちたのはほんとに惜しいところです・・・。)