細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

ユートピア

岩波文庫で苦にならない厚さのトマス=モア。ユートピアは素直にユートピアを書いた本ではなくて、熱狂とはほど遠い、けれど熱情あふれる思考実験なんだなぁ。
共産主義の失敗を現在の私たちは知っているけど、何が公正な社会、分配、労働なのかを追求する必要がなくなったわけではまったくなくて。「ハードワーク」を読んだときにも途方に暮れた同じ感覚。必要なのは何なのか。私たちの賃下げか、私にどうにもならない景気の拡大か、たくさん買うことか高いものを買うことか、あるいは寄付か。
たぶんフェアなものを買うことだけど、何がフェアかな。ぐるっと回った三日月型のディストピア、読みやすく面白い読み物だったのは確かです。