細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

沼地のある森を抜けて

梨木香歩。帰りがけに読むものがなくて、駅の本屋さんでぐるりのことと迷って買ったら、もう手放せない。あっという間に読みふけることになりました。
なんといっていいか、すごく不思議な読後感。予想したオムニバス的展開が、裏切られてあれよあれよと進んで、しんみり来たのは中盤の叔母の、姉のような、あたたかな存在。もっとおどろおどろしいお話にもなりそうなものを、節度の効きに効いた筆致。沼の中にどっぷり引き込まれるような、でも出ていくような、芯のある物語でした。