細波水波

さやさや揺れる風の中 さわさわ揺れる水の音 たゆたいながら月に10冊年100冊

子どもと子どもの本のために

エーリッヒ・ケストナー、言わずと知れた高橋健二訳。
子どもに向けた本ではない、けれどどれも知っている。確かにこの人は、大人に向けてと子どもに向けてと言うことを変えてはいないのだ。むかし約束してください、と彼は言った。子どもの私に。大人になってもあなたが子どものころのことを忘れないでくださいと。私は忘れていないつもりだけれど、忘れてないとは言い切れない。子どもの悲しみが大人の悲しみより軽いことはない。少なくとも私は飛ぶ教室の前書きは覚えてる。正義先生が何を語ったかも覚えてる。いや、それはみんなこの本を読んで思い出されたのだ。
私は確かにその何十分の一か、ケストナーからできている。願わくば、引き出しにしまいこんだものを眠らせたままでないように。私はケストナーが、とりわけ飛ぶ教室と点子ちゃんが、大好きだ。(そして原著の挿絵で読める岩波のシリーズにあらためて心底の感謝を。)
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